VE検査について
意味のあるVE検査とは?
「口から食べる力」を回復するために何をすべきか?
一般的に、VE検査を受けると適切なお食事形態について説明を受けると思います。しかし、口から食べる力を回復するには今後何をすべきか、この本質的な部分にも踏み込まなくては意味がありません。当院では、摂食嚥下の診療として重要なスタンスだと考えています。
嚥下機能が低下するとどうなるか?
誤嚥性肺炎だけでなく、あらゆる基礎疾患と相互に関連
嚥下機能が低下すると、誤嚥しにくい食事形態(流動食など)にする必要があり、お食事の満足度が低下します。さらには栄養状態にも関連してきます。また、唾液中に含まれる口腔内細菌量によっては、唾液の誤嚥により誤嚥性肺炎が引き起こされます。
昨今、嚥下機能が重要と言われています。それは、特に基礎疾患を多く抱えている現代の高齢者においては、あらゆる疾患が嚥下機能に影響を及ぼし、また逆に、嚥下機能があらゆる疾患に影響を及ぼすからです。さらに、コロナ禍の自粛生活の長期化による運動不足、筋力低下により嚥下機能が低下しているケースも見受けられます。
嚥下機能が低下した場合、以下のような症状が挙げられます。その際は、VE検査を受けてみることをおすすめします。
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食事中によくむせる(特に水分でむせることが多く、味噌汁等を避けるようになる)
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食事中でなくても突然むせる、咳込む(唾液でむせる)
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飲み込んだ後も、口腔内に食物が残っている
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ご飯より麺類を好むなど、噛まなくてよい物を好むようになる(咀嚼力低下)
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食事の後、ガラガラと絡んだ声になる
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食べるとすぐ疲れて、全部食べられない
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体重が徐々に減ってきた
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毎日飲んでいた薬を飲みたがらない
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尿量が減った(水分摂取を避けている)
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発熱を繰り返す(誤嚥性肺炎の疑い)
VE検査の結果を、医療介護に活かす
入院の頻度が減る、体調を崩しにくくなる、QOL向上へ
嚥下機能は高齢者のあらゆる疾患、さらには窒息事故等のアクシデントにも関連しています。そのため、「その後何をすれば良いのか」を決定する際には、栄養状態や咀嚼状況、基礎疾患など多角的視点で全身の状態を把握する必要があります。
たとえば、こんな例があります。
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食形態を必要に応じて落とさないと、誤嚥だけでなく窒息事故の原因にもなる
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食形態を落とし過ぎると食事の満足度が下がるだけでなく、栄養状態の悪化につながる
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食形態を落とし咀嚼頻度が減ることで、認知機能低下につながる
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経口摂取を控えることで、胃酸逆流による逆流性食道炎のリスクが上がる場合がある
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とろみ剤を多くすれば栄養や薬剤の吸収が落ちるという報告もある
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嚥下機能に合った薬剤でないと、うまく飲み込めず口腔内に残り、薬効低下につながる
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義歯の修理や新製をする場合、嚥下機能に影響が出ない形態に仕上げる
このような多角的視点を持ってメリットとデメリットを比較衡量した上で食形態やその後の対応を決定しないと、かえって体調を崩すなど逆効果になってしまいます。こうして、現場レベルの医療や介護に活かすことがVE検査に求められている姿だと考えています。
その結果、健康的な生活、QOL向上、すなわち日々の体調が安定し入院の頻度が減る、体調を崩しにくくなる生活へとつながってこそ「VE検査の成果」だと考えています。